（メトロポリタン美術館と五番街をはさんで向かい側、窓のアーチが美しい建物 1999.4.24撮影）
美術館でお洒落な時を過ごすのも悪くはないが、やはり私には街を歩く方が面白い。メトロポリタン美術館を後にして、ダンと私はアッパー・イースト・サイドを散歩する。この辺りは高級アパートが続く落ち着いた住宅地だ。
外観が美しいあのビル（写真）は昔「フレンチ・コネクション」で使われたのだ、とダンが言う。確かに綺麗だ。とにかく私にとってこの街並みは映画のセットの中にいるようなもの。歩くだけでウキウキしてしまう。（※後日調べてわかったことだが、この建物は「心の旅」でハリソン・フォード一家が住むアールデコ調の高級アパートとしても使われたらしい）
ダンが興味深いことを教えてくれる。同じマンハッタンの住宅地と言ってもセントラル・パークを挟んで東側はいわゆるDINKSや核家族が多く、対照的に西側には親子代々で古くから住んでいるような家が多いそうだ。この話は面白い。実は、数日前にアッパー・ウエスト・サイドを歩いた時、犬を散歩させている人がやたらに多くて「ここは犬の飼育場か～!」と叫びたくなった。彼の話から閃いたのだが、犬を飼うのは絆の深い家族であることの証なんじゃないだろうか、ニューヨーカーにとって。そう言えばアッパー・ウエスト・サイドに住むトム・ハンクスも犬を散歩させていたっけ（「ユー・ガット・メール」の話）。
ダンとの会話で気付いた面白い現象がもう一つある。ダンの喋る英語が一度で聞き取れずに何度も聞き返えしていた私だが、こと映画の話題になると彼の英語がすんなり入ってくるのである。彼も映画が好きらしい。古い作品についてもよく知っている。ダンとは映画の話ならいくらでもできそうな気さえしてくる。問題は英語じゃない、話の中身なのだ。
そこで長年の疑問をダンに聞く。"Long time no see."は今でも使われるの? 「草原の輝き」でナタリー・ウッドがウォーレン・ビーティに言ってたんだけど・・。「草原の輝き」の原題がわからなかったが監督がカザンで、役者が誰ソレで・・と言っているうちにダンが、それは"SPLENDOR IN THE GRASS"だねと言い当ててくれる。ちなみに、"Long time no see."は親しい人に言う「お久しぶり」の意味。映画では昔恋人同士だった二人が再会する場面でヒロインが元恋人（今は別の女性と結婚）に言う。甘く切ないシーンだった。（映画製作は1961年）
で、ダンの答えは"Yes"、今でも使われるそうだ。それを聞いて安心した。知ったかぶりしてメールによく使っているので気になっていたのよね。 "Long time no see."は元々アメリカに移住して来た中国人たちの言い回しで、それがスラングになったらしい。さすがに人生長いだけあってダンは物知りである。
この後、スラングの話になる。その流れで「パルプ・フィクション」の話になり、彼が"I love that movie."と言うので私も思わず、"I love that movie too!"。好きな映画が一緒で盛り上がる。でも、ここは、"So do I!"と返した方が英語っぽくてかっこよかったカナァ・・。（って、ネイティブ・スピーカーに知ったかぶってどうする?!）
A thousand thanks, Don!
■1999.11.1 記
